
2)身体的健康度チェック
身体的健康度のチェックは、一見したところでは健康に見える被験者の健康状態を調査し、被験者のカテゴリ分けを行うためと、被験者として適切でない者を除外するために行われた。
動揺曝露実験被験者の身体的健康度のチェックは、平常時の
?血液・尿検査、
?心電図(波形およびミネソタコード)および
?平衡機能検査
によって行われた。
採血、採尿は、武貞昌志委員(医療法人聖樹会総合健診センター理事長)の監督の下で大阪府立大学厚生課保健室看護婦の協力を得て実施し、分析は聖樹会総合検診センターにおいて行われた。検査項目は、通常の健康診断において行われる検査項目とほぼ同じであるが、酔いの過程におけるホルモンの動態を調査するために、カテコールアミン3分画(アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミン)の分析をも実施した。表2.2.2−3に、主な検査項目の表す内容の説明を記す。
表2.2.2−4に、血液分析結果を用いた相関解析によって得られる相関係数を示す。表中の太字は他と比べて相関の高いことを表している。通常の健康診断に用いられる血液成分であり、個々の成分間の従属関係は一部を除いてあまり高くないことが分かる。赤血球数、ヘモグロビン、ヘマトクリットの3成分の相関はかなり大きい。また、肝機能を表すGOT、GPT、γ−GTPについても、比較的相関の大きいことが分かる
図2.2.2−2に、血液分析結果(23項目)の中から、血液学検査(RBC,WBC)、脂質代謝(CHO)、肝機能(GOT),腎機能(BUN),膵機能(AMY)、血清学検査(CRP)、糖代謝(GLU)の8成分を用いたクラスター分析結果を示す。血液検査の項目はこの他にも多数あるため、図から被験者の分類を確定することは困難であるが、パラメターの選定を医学的見地からの所見を考慮して適切に行い、データ数を更に増やすことによって確実な分類が可能であることを示唆している。
平常時の心電図検査は動揺暴露実験時と異なり、単極胸部誘導法による胸部からの誘導によって心電図波形と同時にミネソタコードを抽出することの可能な「ホルター型心電計」を用いて行われた。図2.2.2−3に使用したホルター型心電計の概要を示す。また、単極胸部誘導法における電極装着位置を図2.2.2−4に、また、実際の測定状況を写真2.2.2−1に示す。図2.2.2−5は、心電図検査において得られた測定結果の一例である。心電図検査測定結果の分析、評価、診断は専門医師(武貞昌志委員)によって行われた。診断の結果、心電図異常者、被験者として不適な者はなかった。
平衡機能検査は、「重心動揺計(めまい計)」を用いて行われた。(図2.2.2.6参照)この装置は、センサーを装着した検査板上に開眼および閉眼状態でそれぞれ1分間直立して、直立状態からの身体重心の変位を計測し、その軌跡の総延長、軌跡の囲む面積等を用いて解析し、被験者の平衡感覚を検査するものである。写真2.2.2−2に平衡機能検査状況を、図2.2.2−7に重心動揺計の出力例を示す。平衡機能検査結果と健康度との関係については、明瞭な関係は得られなかった。また、平衡機能上、被験者としての不適格者はなかった。
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